相続・生前贈与は専門家に頼む+「自分たちで考える」もの

2019年11月26日・相続・遺言

週刊誌やワイドショーを見ていると、「相続新時代」という言葉が目に入ります。相続というとお金持ちに対する税金であり、そもそも亡くなったときの話なので、現役バリバリの自分たちには関係の話のはず。また、おそらくその時になれば税理士や金融機関など専門家にお願いするもの。ただ、考えてみれば以外にも、相続は日常生活と密接に関わっています。そして、「自分たちで考えるもの」という性格が強いことに気がつきます。

相続税は2015年に、課税の発生する目安がそれまでの基準から大きく下がり、都市部で居住不動産を所有しており、ほかの財産をある程度持っていれば税金の支払いが必要な状況となっています。家族間で相続のトラブルが起こることを「争族(あらそうぞく)」といいますが、お金持ち(富裕層)よりも相続を受ける人に分配する資産が無い方が納得できない人がいる特徴もあります。

その対策として、たとえば居住用不動産を相続人で分割して相続することがあります(共有名義での相続、といいます)。また相続試算は現金や不動産、生命保険金といった個人資産だけというイメージがありますが、経営者が所有していた会社の非上場株式も相続資産です。その時の相続として良くあるエピソードが、以下のふたつです。

1.故郷の実家って、親が亡くなったらどうなる?

もういくつ寝るとお正月。お正月には生まれ育った実家に帰り、久し振りに祖父母と会う方も多いでしょう。今は息災でいてくれることがとても嬉しいけれど、いつか別れる時が来る。相談すると不謹慎といわれそうですが、すぐには解決できそうにない問題。そのときにこの実家って、このままでいいのでしょうか。

祖父母が亡くなると、当然ですが実家に住む人はいなくなります。その時に売却、もしくは建物(上物)を解体して土地を売却できればいいのですが、田舎だと希望する値段がつかないということも。一方で実家をそのままにしていたとしても、毎年の固定資産税がかかる「負の遺産」となってしまいます。

一念発起して「実家を売却しよう」と決めたものの思わぬ誤算が。相続時に「50%と50%」で所有権を分けた弟が、「実家なのだから売らずに残しておこう」と言い出します。税金がかかることを伝えても「兄弟で共同負担すればいいじゃん」と。ただ妻には「なんで住んでもいない場所の税金を支払わなくてはならないんだ」と言われ、不動産会社に案件として出すと実家まわりの近所の人から、「親の土地を簡単に売却するんだ」という噂されてしまう。いったい自分はどうすればいいのでしょう。これが相続を巡るトラブルです。

この不動産を巡る話し合いがまとまらないと、家族が慣れ親しんだ実家は管理する人がいなくなり、固定資産税の対象となる一方で空き家となり、地域にも迷惑がかかるなど様々なトラブルを発生させます。また親世代が突然の病気などで「突然亡くなってしまったケース」は、相続のことを話し合う時間がなく、止むを得ず上記のように不動産を分配し、後々大きなトラブルになる、というケースが散見されます。

2.親が育ててきた中小企業を引き継ぐ。そのために株が必要

また、これは別の人の話。3人兄弟で、父親は中小企業の工場の社長。いずれは長男が後を継ぐとされ、高校卒業後は工場に勤務し、承継の準備を進めてきました。ところが父親が亡くなると、企業の株式ぐらい「しか」なかった資産は3人に分割されることになります。次男と3男は工場経営に参画していなかったのですが、何も貰わないより。。と、企業の株式を3分割することになりました。

これに納得いかないのは長男です。株主に次男と三男も含まれるため、工場の重要な物事を決める株主総会では、常にほかの兄弟にも参加権が生まれます。つまり長男は、実際に参画していないほかの兄弟の意向も伺いながら、会社経営をしなければならないことに。

これを解決するには、先代のうちに事業承継を見越して法人保険に加入するなど、非上場株式「以外」の資産を用意しておくこと。また父親が息災なうちから家族で次世代のことを話し合って、会社経営に難のない合意を取っておくべきこと。

これらの例のように、相続は先代の死後に準備をすることによって、様々な争族(あらそうぞく)が発生します。これを解決に導くには、早めに専門家に相談することと、「自分たちで考える」こと。

3.最大の相続の対策は、「自分たちで考える」こと

相続の相談を受ける専門家といえば税理士や司法書士などの士業。また銀行や信託銀行といった金融機関も相続の相談を受けています。相続は煩雑な手続きも多く、専門家に頼むのはとても効果的です。ただ一方で、家族でとことん話し合うのはとても大事。

前項の実家承継にしても、非上場株の承継にしても、家族間で何も決めていない状態で専門家に持ち込んでも、専門家がすぐに解決することがありません。ある程度道筋を組み立ててから、具体的にどうするのかの方向性策定として専門家を頼りにすること。少なくとも専門家への相談は、関係者が「了解」をしたうえで開始することが、問題を長引かせないようにするときのポイントです。

もちろん、既に相続をめぐって当事者の感情が縺れてしまい、専門家のなかでも紛争を専門とする弁護士のマターとなる場合は、また話が変わってきます。ただ、弁護士のなかにも相続においては「紛争解決」に重きを置く方も多いため、早い段階で相談してみるようにしましょう。

4.生前贈与のためにも早く話し合うことが大事

早めに相続を考えるときに活用できるのが「生前贈与」です。生前贈与とは、親が息災なうちに配偶者や子どもたちといった次世代に資産を渡してしまうこと。相続税と同様に「贈与税」という税金がかかりますが、一方で年間110万円以下は非課税、また教育資金や結婚・子育て資金など特定の目的の場合にも非課税となるなど、国が推奨しているものです。

相続の場合は被相続人が亡くなっている以上、「亡くなった人に口なし」としてその意志を確認することも難しい面があります。生前贈与はその分、生前に家族で話し合うことができるので、争族を解決するのに相応しい方法といえるでしょう。たとえば父親が50歳となって、家族が集まれるお正月やお盆に、「今出来る範囲での相続準備」を進めておく。それが将来の争族を解決するための第一歩ではないでしょうか。

相続は大事な資産を、次の世代に向けてどうするか、「自分たちで考える」もの。専門家に頼む部分とタイミング。一方の自分たちで考え、話し合う部分とタイミング。両者を活用しながら、将来の相続の準備を進め、争族の回避に向けてまとまっていきたいものですね。

【この記事の著者】

株式会社FP-MYS 工藤 崇

株式会社FP-MYS 工藤 崇

FP-MYS代表取締役社長CEO。1982年北海道生まれ。相続×Fintechプラットフォーム「レタプラ」開発・運営。資格学校勤務後不動産会社、建築会社を経て2015年FP事務所を設立。1年後の2016年7月に法人化。多数の執筆のほか、Fintech関連のセミナー講師実績を有する現役の独立型ファイナンシャルプランナー(FP)として活動中。スタートアップとしてシードラウンドまでの資金調達完了済み。拠点は東京都中央区茅場町。

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