私たちの年金受給はいったい何歳から?2019年公的年金の最新事情

2019年12月26日・年金

このあいだ街を歩いていると30代くらいの男性が子どもに、「僕たちの年金を宜しくね」と冗談を言っていました。現在懸命に働いている人たちは年金(保険料)を納める方です。30年40年後には逆に年金を受け取る立場になりますが、不安なニュースが多いのも現実。制度上、私たちの年金受給環境は問題ないと言われても、少子化の最新事情や公的年金の財布(GPIFといいます)の運用状況が報じられると、大きな不安を覚えます。一方で政府の対策も報じられています。そんな2019年の公的年金の最新事情を噛み砕いてお伝えします。

1.公的年金制度が向き合う「何人で1人」を支える?

公的年金制度は世代間扶養方式を採用しています。記事あたまの会話のように、それまでに年金保険料を支払う立場だった高齢者を、そのときの現役世代が支える制度です。少子化の波を受け現在の2人(の現役世代)が1人(の年金受給者)を支える状況が、2050年には1.3人が1人を支える構図に変わるといわれています。現役世代が減ると、当然負担する保険料は上がる、という計算です。もちろん生まれた時代が変わったからといって、負担感が異なるのは制度として欠陥があります。そのため年金の制度改革では、現役世代の負担軽減や、年金受給者の受給要件見直しなどが行われます。

2.2020年、年金改革の目玉は75歳受給開始制度の開始!

公的年金の受給開始は65歳。現在の制度では60歳に早めることが出来る一方、最大70歳まで「繰り下げ受給」をすることができます。この時に65歳から70歳のあいだで繰り下げをすると、1カ月あたり0.7%の支給額増加となります(繰上げは1カ月あたり0.5%)。70歳まで受け取りを伸ばすと1年8.4%の5年で42%増加した年金を一生受けられることになります。

65歳を迎えても「あと10年は働ける。支給開始を遅らせて75歳から受け取りたい」という希望者に対しては、更なる上積みをします。仮に現行の1月あたり0.7%を適用するとした場合、70歳から更に42%プラス、65歳からは84%プラスした金額を受け取ることが出来るようになります。

具体的な計算をしてみましょう。満額受給の条件となる40年間の年金保険料を完納したAさんは年金を65歳から受け取るという選択をし、年額780,100円を受け取りました(平成31年4月からの支給額)。同条件で70歳まで繰り下げたBさんは42%増額の年額1,107,742円、2020年以降に75歳まで繰り下げをしたCさんは1,435,384円もの受給額になる見込です。

ただ、年金受給を繰り下げて万が一「亡くなってしまった」場合、遺族が繰り下げた分を受け取れる制度ではないことに注意が必要です。これは国民年金のみの受給額で、会社員や公務員の方はここに上乗せした厚生年金が支給されます。厚生年金は納付保険料によって異なるため、受給できる厚生年金を試算したうえで国民年金の受給時期を決めるようにしましょう。一方の60歳からの繰上げ受給を選択すると、最大30%の減額となります。これを24%まで圧縮することも検討されています。

また、上乗せの年金支給は厚生年金だけではありません。ここ数年大きな注目を受けている個人型確定拠出年金(iDeCo)や積立型NISAも老後資金を充実させるためのもの。何よりも順調に貯金をしていた場合は、国民年金を65歳から受け取る必要性が無くなるということに繋がります。つまり、年金受給の選択性が個人ごとに強まる、といえるでしょう。

3.働く60代が有利になる(在職老齢年金の改定)

現行制度では60歳を超え、毎月の給与・賞与・厚生年金受給額が60~64歳で月28万円、65歳以上で月47万円を超えると国民年金が減額される「在職老齢年金制度」がありました。現役の高齢者に対して年金受給を抑制することが目的ですが、言葉を選ばずにいうと「60代以降は働けば働くほど損をする」という制度でもありました。それほど一般的な定年を迎えた後も働く人は例外的であり、制度設計もそれを前提としていました。ここ10数年で、状況は大きく変わってきています。

ここに引き下げの改定が関わってきます。受給開始の引き下げがさらに一般化すると、在職老齢年金の必要性が無くなるという議論があります。具体的に見ていきましょう。今後、年金繰り下げの選択肢が広がると、そもそも在職のあいだは年金の繰り下げを申請し、引退後に受給を開始し、繰り下げた増加分の年金を受け取るという選択が一般的になるでしょう。もちろん在職老齢年金を一気に廃止すると高齢者のライフプランが大きく変わるうえ、現行制度の適用世代と比べたときに不公平感が生まれるもの。まずは現在の減額基準を50万円などに引き上げたうえで、段階的に廃止していく可能性も残されています。一方で定年を迎えても引き続き働き続けなければ老後資金に余裕はないという声も。在職老齢年金は、生活に余裕のある人だけが関係する問題という声もあります。

4.「2020年」の制度改正は厳しいのでは?

2019年の12月に入り、来年度の税制改正大綱が発表されました。発表の内容にここまで記載した受給年齢の引き下げ、在職老齢年金の改定条項は含まれておりません。2020年に入ってから法改正として起案される可能性はありますが、とても多くの人が興味関心を持つ。。。というよりも、多くの人が当事者ごとである年金制度改革。時間のないなかで性急に改革案を進めると、強い反発が予想されます。

少子化の進行や働き方改革の浸透により、年金制度の見直しは迫られています。ただ、数ある解決課題のなかで、年金制度は特にセンシティブなもの。制度の見直しは2020年ではなく、更に数年遅れるのではないでしょうか。また70歳までが上限として、「止むを得ず」繰り下げ受給を選択していた人が「もし75歳から加算支給されるのであれば75歳からの申請にしていた」となれば、どのような支給体制にするのかは複雑なものとなります。これは在職老齢年金も同様で、敢えて年金減額にならないように勤務先と交渉しているケースも多数あるでしょう。そのなかで「強制的に」適用月収を変えるのは著しく困難ではないでしょうか。

来たる2020年以降も年金改革は引き続き急がれています。様々なニュースを見ながら、自分自身に必要なニュースを取捨選択してチェックしていきましょう。保険料を支払う現時点ではなく、将来的に自分はどのような受給の仕方が出来るのかも合わせて確認していきたいところ。合わせて年金に「のみ」頼らない場合は何が出来るのか、少しずつ考えていくことが、将来に向けて一歩一歩の大切な準備になります。

【この記事の著者】

株式会社FP-MYS 工藤 崇

株式会社FP-MYS 工藤 崇

FP-MYS代表取締役社長CEO。1982年北海道生まれ。相続×Fintechプラットフォーム「レタプラ」開発・運営。資格学校勤務後不動産会社、建築会社を経て2015年FP事務所を設立。1年後の2016年7月に法人化。多数の執筆のほか、Fintech関連のセミナー講師実績を有する現役の独立型ファイナンシャルプランナー(FP)として活動中。スタートアップとしてシードラウンドまでの資金調達完了済み。拠点は東京都中央区茅場町。

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