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公的年金制度の改定!というニュースを見ると、いま月に1万円以上も支払っている年金保険料を、将来も同じように受給できるのかという不安は、皆が持っています。同時に、いま年金資格を特例的に受け取っているけれど、これはいつまで続くのかという不安を持っている人も。代表的なものが主婦の「第3号被保険者」です。
会社員や公務員の妻を国民年金の保険料支払いなく保障対象にする「第3号被保険制度」は、1985年に導入されました。それまでは国民年金に加入していた「妻」も、国民年金の加入率は約7割に留まっていました。残り3割の老後生活の保障と、家計を陰で支えた内助の功に報いるものとして、3号年金制度が導入されています。
それから30年余り、時代背景は大きく変わりました。女性の社会進出が進み、夫婦内にも「主夫」が増えてくるなど働き方が多様化するなかで、「主婦だからといって年金保険料を支払わないのはどうなのか」という声が大きくなっているのは事実。大枠として国も今後の年金改革の一環として、3号廃止を掲げているのは間違いありません。ではどこまで話が進んでいるのか。そして、3号廃止になると当該の人たちはどのように状況が変わっていくのでしょうか。2019年に議論されている、主婦の年金こと第3号被保険者の最新状況をお伝えします。なお便宜上「主婦」とは買いてありますが、女性が社会に出て、男性が第3号の対象者となる「主夫」ももちろんこの問題の対象です。自身が男性で第3号を受け取られている場合は、主婦を主夫に読み替えてください。
2019年9月の厚生労働省の報告書「働き方の多様化を踏まえた社会保障の対応に関する懇談会」では、男女平等社会の到来により将来的に第3号の廃止可能性に触れるものの、時期の明示化や段階的な施策には言及していません。ただ第3号の対象から外れる年収130万円の是非を記載しているため、まずはこの部分から改定していくものと思います。
今回の着地点としては、第3号の廃止是非に踏み込む代わりに、厚生年金保険の対象事業所を現行の501人雇用から、51人以上の雇用に引き下げる方針です。これにより、現行で厚生年金の対象になっていない事業所勤めで、年収130万円以下の「パート主婦従業員」が厚生年金の対象となり、第3号の対象を外れ、年金保険料納付が増加する想定されています。また別の議論として、一定の収入がある年金受給者を年金支給の対象者から外す「在職老齢年金制度」を拡充することにより、年金の支給額を抑え、年金財政を整えるという施策が取られています。この条件を厳格化するという方向にこの先向かっていく可能性が高いでしょう。
この改定には別の観方もあります。これまで配偶者の扶養から外れていて、勤務先がパート従業員を厚生年金対象者としていなかった場合は、国民年金に加入するしか方法がありませんでした。この対象者を厚生年金の対象者とすることで、将来の年金受給額を増やすことが出来るというものです。
このように最新の議論を見てみると、毎月年金保険料を納めている勤め人からは第3号の制度に不公平感を感じる人も多いと思います。まだそこまで「支給廃止すべき!」という空気感は醸成されていないようです。第3号の対象者に年金支給義務を課すと明らかな負担増加になるうえ、厚生年金を納める配偶者の勤労が妻の内助の功によるものであることも事実です。
今回の厚生年金のパート従業員拡大施策のように、まずは年収130万円に限らず、年収がある人を第3号から外す対策や、一例ですが厚生年金に現在の3号保障より将来の支給額が良い「第3号用厚生年金特例枠」を設ける方向になるのではないでしょうか。また今後、扶養との状況を管理しながら年収を130万円に抑えている年齢層を仮に30歳~60歳とすると、第2次ベビーブーマー世代(1971年~1975年頃生まれ)以降は人口が減少していきます。合わせて第3号の対象者も減っていくと仮定できるため、刺激の強い廃止策よりも自然減を待つという施策を取る可能性が高いのではと考えます。
ここからは少し議論の方向を変えますが、第3号被保険者制度をどうしたらいいのか、に直結する大事な問題です。年金制度の将来を考えるとき、大事な視点は「現行制度を維持できるのかどうか」です。日本の人口が減少する一方では、当然ながら現在の(年金制度維持の)前提条件が変わるため、第3号の廃止などの議論が生まれます。ただ、年金保険料が年々上昇するならば、不公平感の解決という視点こそ残りますが、第3号も支給廃止という議論にはなりにくいもの。
そこで日本の現状を見ると、日本国内において労働人口が急上昇している、外国人労働者と公的年金の状況が関係します。
公的年金の保険料は当然ながら、ひとつの国に対して納付するものです。仮にインドで生まれ、大学卒業と同時に日本で勤務し、50歳で母国インドに戻ったAさん。日本に滞在した30年弱のあいだ、彼女は日本の公的年金制度に加入します。50歳でインドに戻った時点で、インドの社会保障制度に切り替え、以降はインドの保障対象が続きます。これは日本とインドのあいだに「社会保障協定」が締結されているため。社会保障協定の対象者は、日本年金機構のホームページで確認することができます。
日本年金機構:https://www.nenkin.go.jp/service/kaigaikyoju/shaho-kyotei/kyotei-gaiyou/20141125.html
街を歩いていると、コンビニエンスストアを始め各所で、外国籍の人たちが働いているのを見かけます。会社によっては上司・管理職が外国人です、というところも珍しくはなくなりました。社会のなかでも急増している昨今ですが、上記の社会保障協定を見ると、意外なことに気がつきます。
ベトナムやミャンマーといった国々と日本は社会保障協定を結んでいないのです。これは「日本にて就業する」のみならず、日本人がベトナムで就業する場合も同様です。日本で既にコミュニティを確立しているこれらの国々と社会保障協定を結ぶことで、保険料徴収額も増大し、第3号議論の必要性が無くなっていく。第3号は不公平だから無くすべき、という議論と、並列で考えなくてはいけない部分だと思います。
令和を迎え、年金制度が時代に即したものであるのかは、常に議論を呼ぶものです。現状の問題点を対応しながら、ひとりでも多くの人が納得できる、そんな公的年金制度が確立されていくことを願います。
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