FPから見た2020年税制改正「暗号資産の税制」について

2019年12月12日・金融

「暗号資産」を資産運用の一環として取り入れている人は多いでしょうか。毎年、税制面における新たな流れが提示され、「いま金融庁はこれをリアルタイムの課題として見ている」という証明になるものが、毎年12月に閣議決定を経て発表されます。これが、「税制改正大綱」です。まさに、今年の大綱の主役は暗号資産といわれています。そういえば、少し前に仮想通貨という言葉が流行し、いくつかニュースにも取り上げられました。どのような関係があるのでしょうか。

1.仮想通貨から暗号資産へ

まずは税制改正大綱について。翌年の国会でおける各種税法改正を前に、いわゆる「清書前の最終下書き」として発表されます。大綱の作成過程においては各団体から要望が届きます。その改正は本当に必要なのか。必要ならいまこのタイミングが議論されていきます。

2018年12月に、金融庁や仮想通貨の呼称を暗号資産に改めると発表しました。G20などの国際会議で呼称が変わってきていることに倣い、日本は行政主導で「定義」を決めたかたちです。仮想通貨は円やドルなどの法定通貨と判別がつきにくい。という背景もあります。もともとは仮想通貨は暗号資産の一部ですが。仮想通貨の代表格であるビットコインですが、これからはビットコイン=暗号資産という使われ方をするようになっていくのでしょうか。

2.暗号通貨の運用が減税対象になる?

ここから本稿の本筋として、暗号資産をめぐる税金の問題についてお伝えしていきます。暗号資産を規制する法律は金融商品取引法です。一般的には金商法(きんしょうほう)といわれ、株式やFXの取引規制と同じ法律です。ただ、これら昔からある資産運用方法とは、適用される税率が異なります。

①雑所得と申告分離課税

一般的に給料ではない所得は雑所得です。暗号資産など新たに注目された資産運用による所得も現在は雑所得とされ、取引により獲得した金額によっては最大55%(所得税40%、住民税15%)もの税率がかかります。一方で株式取引やFXは申告分離課税が適用されます。これは他の所得とは分離して、確定申告によって税金を納めるもの。この適用範囲になると税額は大幅に減少し、20%(所得税15%、住民税5%)となります。

暗号資産取引は日本で浸透してきたこともあり、現在の雑所得から、申告分離課税への切り替えが行われるかもしれません。確定申告は毎年1月―12月を期間として翌年の2月から税務署が申告を受け付けるものなので、タイミングとしては2020年度に申告分離課税への扱い変更が決まり2021年から(2022年の確定申告から)、もしくは翌年の2022年から(2023年の確定申告から)というタイミングになるのではないでしょうか。ただ、暗号資産はトラブルの多いもの、という認識を持っている人も一定数いるのは事実。そう考えると、数年をかけて信頼性を確立したうえで、税金面の扱いが変わっていくのかもしれません。

②損益通算と繰越控除の適用

今回の税制改正で、暗号資産に申告分離課税を適用したうえで、損失が出た場合にほかの所得と相殺できる損益通算と、損失を3年間繰り越せる繰越控除の適用が求められています。これが実現すると、暗号資産の運用で損失が生まれた際に他の資産運用と相殺したり、複数年度にわたって損失を繰り越したりすることが可能となります。FPから見ると、この損益通算と繰越控除が、暗号資産がより身近なものになるにあたり、ぜひ導入して欲しい制度だと感じています。

数年前からビットコインが「新しい資産運用法」として注目されましたが、同時に大きな懸念事項だったのはそのボラティリティの高さでした。ボラティリティとは資産運用をするなかで、短期間で著しく変動する価格のこと。つまり、ある月の月始にはビットコインの価格が急上昇をして資産構築したものの、「まだまだ上がるだろう」として売却せずにおいて、あっと気付いたときに急降下をしてしまうというものです。仮想通貨から生まれた流行語である「億り人」も、大きな損失を生んでしまった人も、このボラティリティが要因のひとつです。

特に資産運用に慣れていない人は、これからはビットコインの時代だ!という風潮に背中を押され、売却のタイミングを逃して大損をしてしまうことも。このときに損益通算と繰越控除の対象となっているなら、ほかの運用と両立することで、損失規模を小さくすることができます。暗号資産の投資家保護という視点からは、ぜひ優先的に取り組んで頂きたい課題です。実際には前項の申告分離の対象になることで、損益通算の対象になるという枠組みのものです。

③少額非課税制度の導入とエンジェル税制

本来はドルやユーロといった外国通貨を使うとき、決裁は雑所得の対象となりますが、実際は課税されないことも多いようです。暗号資産に関しても、対象外となるこの少額非課税制度の対象に含む働きかけが進んでいます。

また、非上場株式の株を投資家が購入する(出資する)ことによって、投資金額の一部が所得控除になる「エンジェル税制」があります。暗号通貨にも投資の側面があるため、このエンジェル税制の対象にしてはどうか、という議論があります。当社はほかの要素と同様に、今回の税制改正大綱にて審議されるという動きがありますが、最近は少し先送りの可能性が高まっているようです。

3.暗号資産税制は2021年以降が現実的か

このように、これまで独自の位置づけだった暗号資産を、資産運用のポートフォリオの一環とする動きが、2020年の税制改正大綱の中身です。ただ、エンジェル税制の規定以外にも、「今年の税制大綱に暗号資産関連は含まれないのではないか」という予測が強まっています。

その理由のひとつは、規制官庁である金融庁から税制大綱の事前段階として、財務省に対し「こういう大綱にしたい」という要望が入りますが、今年ここに暗号資産関連の要望は含まれませんでした。この流れを見ると、来年1年のあいだで暗号資産関連が盛り上がること。特に大きなトラブルが起きないことで、来たる2020年の大綱(次々回の大綱)の候補に乗るのではないかと思います。これまで暗号資産に縁がなかったり、いわゆる食わず嫌いをしていたりした人も、最近興味を持ち始めている人は多いでしょう。そのあたりの更なる浸透を見てから、という判断になるか、まずは大綱の草案に注目していきましょう。

ただ、暗号資産は税制面のメリットだけで取り組むものではありません。大切な投資元本をどのように増やしていくのかの視点、そして暗号資産の最大の特徴ともいえる高いボラティリティの側面です。ここ数年の流れを受けて、資産運用面で確実に存在感を増している暗号資産。今回の税制大綱がどのような内容になるかはまもなく明らかになると思います。それを受けての変化にも留意していきましょう。

【この記事の著者】

株式会社FP-MYS 工藤 崇

株式会社FP-MYS 工藤 崇

FP-MYS代表取締役社長CEO。1982年北海道生まれ。相続×Fintechプラットフォーム「レタプラ」開発・運営。資格学校勤務後不動産会社、建築会社を経て2015年FP事務所を設立。1年後の2016年7月に法人化。多数の執筆のほか、Fintech関連のセミナー講師実績を有する現役の独立型ファイナンシャルプランナー(FP)として活動中。スタートアップとしてシードラウンドまでの資金調達完了済み。拠点は東京都中央区茅場町。

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