消費税10%の救済制度になる?インボイス制度を理解しよう

2020年03月17日・コラム
消費税10%の救済制度になる?インボイス制度を理解しよう

目次

    2019年にスタートした消費税10%。2020年のコロナウイルス拡大を受けて、一時的にでも見直そう(8%に戻そう)という声が生まれていますが、具体的な動きはありません。軽減税率(今日の記事でキーワードになります)の導入にも賛否両論あったのも、記憶に新しいところです。加えて不思議なのは、小売値にも仕入値にも消費税が課税される以上、スーパーで野菜を買う消費者は「何の消費税」を支払っているのでしょうか。この謎を解く鍵が、2023年10月から開始される予定の「インボイス制度」です。インボイス、聞きなれない言葉ですね。

    1.インボイス制度が必要な理由

    No43_消費税10%の救済制度になる?インボイス制度を理解しよう

    この制度を理解するために、1個のリンゴを例にとって解説します。リンゴ原価は1個100円もしないと思いますが便宜上。高級リンゴです。

    (1)青森で美味しいリンゴが収穫される(1個100円)

    (2)東京の果物卸がリンゴを小売店に卸す

    (1個115円=100円+卸手数料5円+消費税10円)

    (3)東京のスーパーでケーキ屋さんがリンゴを購入する

    (1個148円=115円+小売手数料20円+消費税13円)

    (4)アップルパイを販売する

    (リンゴ原価1個217円=148円+調理原価50円+消費税19円)

    この表を見ると、(4)のケーキ屋さんは自身に課税された消費税19円から(3)の小売業者が支払った13円を引いた6円を消費税として納税しています。(4)のケーキ屋さんが19円丸々支払うと、自身の前段階の消費税までも支払うことになり、とても不公平です。この13円の減算を「仕入税額控除」といいます。この控除の要件として、それまでの取引の相手先が発行した請求書等の客観的証拠書類の保存が必要です。これは「帳簿保存方式」と呼ばれ、消費税の計算方法として長らく活用されてきました。ところが、2019年の10%増税の際に、大きな問題が発生しています。

    2.軽減税率制度などへの対応

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    それまでの帳簿には、その時に応じて消費税が5%もしくは8%と、一律の税率が適用されてきました。ところが2019年10月の10%増税から、「軽減税率」が適用されています。

    現在の帳簿には税率を記載することが求められていません。そのため軽減税率の適用下で帳簿を引き続き活用するのは、不正や間違いを誘引する可能性があり、不適格だと指摘されてきました。

    また、「益税」の問題があります。中小企業は規模によって、消費税の納税が負担であると考えられています。一定の要件を満たすと、消費税を納税しない「免税事業者」になることができます。ただ、現実は免税事業者もそれまでの仕入れ行程から消費税を受け取っているため、余剰金が発生する仕組みになっています。これが「益税」であり、消費税の仕組みにおける問題点のひとつといわれてきました。

    3.インボイス制度で何が変わるのか

    No43_消費税10%の救済制度になる?インボイス制度を理解しよう

    この帳簿の代わりになるものを、2023年以降に事業者は活用する義務があります。インボイス制度は、どのような特徴があるのでしょうか。正確な名称は「適格請求書等保存方式」です。特に、帳簿方式との違いを確認しながら見ていきましょう。そもそもインボイスとは、海外取引をする際に貿易国間で手続きをする通関書類のことを指します。国の発行ではなく、消費税の課税事業者が発行するという意味で、この言葉が使われているようです。意味は「請求書」です。筆者は野球の西武ドームにいっとき、「インボイス西武ドーム」という名前が付けられたことが印象に残っているのですが、それはまったく関係がないようです。。

    以下の2点が、2023年から稼働するインボイス制度の特徴です。

    (1)課税事業者は相手方から求められた場合に、インボイスの発行が義務付けられます。この請求書には事業者登録番号や適用税率(帳簿方式では対応しない軽減税率)の対象品目が記載されます。

    (2)前述した免税事業者はこのインボイスが発行できません。そのため、免税事業者の仕入れについてはインボイスがなく、仕入税額控除ができません。

    益税に関して、インボイスがある場合と帳簿方式の場合では、3倍もの差になると仮算されています。インボイス制度を導入した国としては、仕入額控除による益税増加により入らなくなる課税を出来るだけ減らすという目的があります。ただ何よりも、会社の規模により消費税を納める会社と納めなくて会社があるのは納税の不公平に繋がります。早急に是正が求められていたものの、システム上対応できず、今回の増税をきっかけにして大々的に改修し、対応できるようになりました。

    インボイス制度導入のスケジュールも抑えておきましょう。一斉にインボイス制度に切り替えるのは混乱を来たすことから、消費税が10%になる2019年からインボイス制度が本格開始する2023年10月までのあいだは、「区分記載請求書等保存方式」が適用されます。この方式では、課税事業者と免税事業者の区別はされません。ただ、軽減税率に対応するため、「軽減税率の対象品目であるかどうか」と、「税率ごとに区分して合計した対価の額(税込額)」が記載されます。

    一方でインボイス制度の問題点についても抑えておきましょう。インボイス制度は発行者、受領者双方で保存する必要があるため、管理の手間が著しく増えること。また取引が発生する際に課税事業者のインボイスと、免税事業者のインボイスを仕訳する作業が増えること。そしてこれまでの帳簿方式では〇〇一式で管理できていた商品管理が、商品ごとに分けなければならないため、請求書を発行するシステムの入力作業が増えることです。

    とはいえ、今や鉛筆を使って帳簿を書く時代ではありません。2023年10月の導入に向けて、ITベンダーやSlerといったシステム・サービス提供者が対応し、実務はそれほど煩雑にならないのではと指摘されています。また税金のスペシャリストである税理士にとっては、益税が減少するため、本来の税金額の顕在化が出来るのではという期待も。実際にさまざまな会社で、インボイス制度の導入に向けた新商品の開発がスタートしています。

    4.フリーランスはどうするべきか

    消費税10%の救済制度になる?インボイス制度を理解しよう

    フリーランスの人のなかには、これまでの益税による恩恵が無くなるため、インボイス制度の開始を危惧している人がいますが、本来は納めるべき税金のため、準備を進めることです。

    インボイス制度のため取れる方法は「営業利益を上げる(消費税の支払余力を持つ)」ことが何よりの方法です。インボイス制度により、免税事業者との取引を控え、課税事業者との取引に切り替える会社が増えるのでは、とも指摘されています。

    5.一般消費者にとってインボイス制度は関係あるのか

    消費税10%の救済制度になる?インボイス制度を理解しよう

    では、事業者ではない一般の人にとって、インボイス制度は関係あるのでしょうか。インボイス制度は消費税に関連した税金納付の制度。消費税は一般消費者が納めない「間接税」のため、インボイス制度は関係ありません。益税に関しても、消費者が直接関係するものではありません。

    とはいえ、煩雑な軽減税率の管理をするのにインボイスはとても便利です。仕事で商品取引に関わっている人は、実務内容が大きく変わる制度改正になります。インボイス制度を理解して、日常業務を円滑に進めるようにしていきましょう。

    【この記事の著者】

    株式会社FP-MYS 工藤 崇

    株式会社FP-MYS 工藤 崇

    FP-MYS代表取締役社長CEO。1982年北海道生まれ。相続×Fintechプラットフォーム「レタプラ」開発・運営。資格学校勤務後不動産会社、建築会社を経て2015年FP事務所を設立。1年後の2016年7月に法人化。多数の執筆のほか、Fintech関連のセミナー講師実績を有する現役の独立型ファイナンシャルプランナー(FP)として活動中。スタートアップとしてシードラウンドまでの資金調達完了済み。拠点は東京都中央区茅場町。

    LettePla:http://letteplabiz.com/index.html

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